株主・投資家のみなさまへ [36期 期末]

株主・投資家のみなさまには平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

当期の経営環境

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変更となり、人出が回復するとともにニューノーマルを模索する動きが加速した一方で、円安が再度進行したことにより企業や家計のコスト上昇への警戒感がさらに強まってきております。

クレスコグループが属するIT産業においては、生成AIが企業の人手不足対策や生産性向上に与える影響に注目が集まるとともに、サイバー攻撃に対する脅威がますますクローズアップされ、企業のIT投資意欲は一段と高まっていくものと判断しております。

当期の取り組み

■ 組織および体制等

当社においては、2023年4月よりさらなる品質強化と業務効率化の促進を目的として、当社の品質管理本部を再編し、品質・プロセス統括本部として改組いたしました。また、デジタルソリューション事業を中心としたクレスコグループの事業拡大のため、当社の営業統括部をビジネスイネーブルメントサービス本部の直下組織といたしました。

 

また、クレスコグループの財務情報と非財務情報(経営理念、事業内容、価値創造プロセス、サステナビリティ/ESGの取り組みなど)を整理し、詳述した「統合報告書2023」を創刊し、当サイトに掲載いたしました。

 

さらに、2024年2月には、「中期経営計画2023」における目標の一つである当社全体でのISMS認証取得を達成いたしました。

■ 財務

当社は、2023年5月10日付の取締役会決議に基づき、当連結会計年度において自己株式500,000株(取得価額の総額995,644,700円)を市場買付けの方法により取得するとともに、2023年9月8日をもって自己株式1,000,000株の消却を行いました。この結果、当連結会計年度末における発行済株式総数は22,000,000株となりました。

 

また、2024年2月には配当方針の変更を決定し、2025年3月期の中間配当より配当性向を40%を目処とすることを発表するとともに、3月には当期の期末配当金額の2円増配を公表いたしました。

 

さらに、2024年3月には、当社において今後のM&A資金および運転資金に充当することを目的として総額19億円の長期借入れを実行いたしました。

■ 事業

当社

デジタルソリューション事業に関して、2023年4月に大手RPAベンダーであるUiPath社の「UiPath Japan Partner Awards 2022」において「Revenue Growth Partner of the Year」を受賞いたしました。7月には、ウイングアーク1st(株)と販売代理店契約を締結し、同社の電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」とUiPathを連携させることで経理業務のペーパーレス化と自動化を実現するソリューションの提供を開始するとともに、2024年2月には、自身で業務自動化を実現できる人材の育成をサポートする「UiPath寄り添いサービス」の提供を開始いたしました。

 

また、AI分野では、社内の業務効率化と顧客への提案内容の高度化を目的として、Microsoft社の「Azure OpenAI Service」を利用した生成AIチャットサービス「CrePT(クレプト)」を構築し、2023年5月より社員向けの運用を開始いたしました。さらに、6月には当社のAI専門家による「AIエスコート」サービスの提供を開始し、10月には数理最適化手法を用いてホテルの部屋割り業務を効率化するツールである「RooMagic」をリリースしております。また、2023年11月には歯のレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得いたしました。

 

クラウド分野では、2023年9月より、CAD等のシステムをテレワーク環境でも快適に操作できるサービスである「GPUSOROBAN リモートワークステーション」の提供を開始いたしました。

 

セキュリティ分野では、「セキュリティ脆弱性診断」のメニューに「ペネトレーションテスト」(疑似サイバー攻撃を通じた課題の洗い出し)と「IoTセキュリティ診断」を追加し、ラインナップの拡充を図っております。

資本・業務提携

2023年6月に、当社が資本出資するインド法人Cognavi India Private Limited社が、インド新卒学生向けジョブポータルサイト「Cognavi」をオープンいたしました。

 

また、2023年9月には、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業であるCAPICHI PTE. LTD.(本社:シンガポール、以下「CAPICHI社」といいます。)に出資、業務提携契約を締結いたしました。業務提携により、当社はCAPICHI社のQRモバイルオーダーシステム「Capichi OI」の日本国内総代理店となり、観光インバウンド対策を通じて飲食店、小売店、宿泊施設のDX化と外国人顧客の満足度向上に貢献してまいります。

 

2023年12月には、当社のセキュリティソリューションの強化を目的として、情報セキュリティサービスを展開する(株)セキュアイノベーション(本社:沖縄県那覇市)と資本業務契約を締結しております。

連結子会社

(株)クレスコ・デジタルテクノロジーズが、サブスクリプション型Wi-Fiサービスである「CROSS for Mist」および製造業向けの「統合BOM管理ソリューション」の提供を発表しております。また、クレスコベトナムが現地の日系製造業向けに生産管理システムの販売を開始いたしました。

 

また、クレスコ・イー・ソリューション(株)がPanaya Japan社の優秀パートナーを表彰する「Partner Award2023」において「Assessment Champion of the Year」を受賞したほか、(株)エニシアスがGoogle Cloud PartnerAdvantageプログラムでデータ分析の分野におけるパートナースペシャライゼーションを取得するとともに、Google Cloudの生成AIパートナーに認定されました。

 

 

その一方で、当社および一部の連結子会社で新卒社員を積極的に採用したことや、従業員の採用およびリテンション対策として給与水準の引き上げを実施したこと、ならびに教育投資を拡大したことに伴い、前年同期に比べて人件費や教育費が増加しております。また、ITサービス事業に関して、当社の複数の大型請負案件について、システム仕様や機能要件、開発体制等に起因する不採算プロジェクトが発生いたしました。

 

なお、2024年1月に当社、当社の連結子会社である日本ソフトウェアデザイン(株)および(株)メクゼスの各社取締役会において3社間の組織再編に向けた方針につき合意したことに伴い、当連結会計年度において日本ソフトウェアデザイン(株)に関連するのれんについて減損損失(特別損失)を2億9百万円計上するとともに、連結子会社2社の本店の移転決定に伴い固定資産に係る減損損失(特別損失)を87百万円計上しております。

 

また、資金の運用に関連して、デリバティブ評価益(営業外収益)を2億73百万円、投資有価証券売却益(特別利益)を3億23百万円、投資有価証券償還益(特別利益)を1億8百万円計上しております。

今後の見通し

2024年度の見通しにつきましては、ロシア・ウクライナ紛争に加え中東情勢の緊迫化など政治経済への悪影響が懸念されるほか、人手不足に伴う採用コストや教育コストの増加、円安・物価高騰による諸経費の増加など業績の下振れ要因が多数認められますが、生産性向上を目的とした顧客企業におけるDX推進がさらなる高まりを見せるものと考えられることから、IT投資は伸長し、クレスコグループの受注も堅調に伸びていくものと判断しております。

 

クレスコグループでは、2024年4月より「中期経営計画2026」をスタートし、2026年度における「連結売上高700億円」「連結営業利益率11.5%」「連結ROE15%以上」を財務目標としております。「中期経営計画2026」の初年度に当たる2024年度においては、策定した成長戦略を着実に実行し、売上高の増加と収益性の向上を目指してまいります。

2024年5月
代表取締役会長 根元 浩幸
代表取締役 社長執行役員 冨永 宏